かつて高校時代に敬愛した日本史の先生に薦められて野間宏の「真空地帯」を読んだ。第二次大戦中の軍隊生活の凄惨さを「真空地帯」というタイトルに例えて描いたこの小説は、ひたすらに陰鬱な軍隊の実体を暴き、今なお私の心に鮮やかな印象を残している。日本史の先生は、確か戦後間もないころに生まれた人だったが、何を思ってこの著作を薦めたか。二度と過ちを繰り返さないためか、あるいは、戦争という極限状態の中での人間の狂気を教えるためか。いずれにせよ、何らかの教訓を教えるために読ませたのだろう。
この小説が映画化されているのを知ったのはつい数日前のことである。早速入手して鑑賞したが、原作にどれぐらい忠実なのかについては、読んでから10年も経つ現在では忘却された部分も多い。とはいえ、近年話題をさらった映画「男たちの大和」に美化されて描かれる軍隊生活よりも、ずっとリアルな内容に仕上がっていることは、「真空地帯」の制作年代が戦後間もない1952年であることを考えれば、疑いないところであろう。ほんの数年前まで軍隊にいたであろう人が世間に多くいるような時代に、史実に基づかない映画が作られるはずはない。「男たちの大和」を見るよりは私としては断然こちらを薦めたいが、ただ陰鬱な映像の続くこの映画は、歴史やドキュメンタリーに興味がある人でなければ楽しめないかも知れない。しかし、そうは思いながらも、極限状態の中での狂気を知らしめてくれるこの作品は見るべきものを持っていると信じるのである。勉強だと思って是非ご覧ください。
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